ブルースとは何か?音楽の裏に潜む意味は?

ども、サニータジマです。

いつも見て下さってありがとうございます!

そもそもブルースって何?っていう疑問に迫って行きたいと思います。

まあ大体こんな感じだろう。

みたいに、ぼんやりとはわかっているつもりだったんですけど

やっぱり、きちんとわかってる方が、音楽を聴いたりプレイしたりするのにも違ってくると思うんですよ。

より深くなる。

ロックの源でもあるし、今のヒップホップなんかにも通じているので

別にブルーズ聴かないけどって方にも、是非知って頂けたらと思います。

ブルースの歴史について

W.C.Handyというミュージシャンがいて。

1903年、アメリカの南部を旅しているとき、耳にしたのがブルースでした。

ギターの弦をナイフでスライドさせて演奏している曲は、今まで聴いたことのない不思議な音楽でした。

南部を旅していると、各地で同じような音楽を耳にし、これがブルースということを知り研究していきました。

大半の曲が12小節が一塊りで、ブルーノートという五線譜には表せない音を多用したり、一定の法則の中で表現される音楽でした。

そしてブルース進行の曲、St.Louis Blues の楽譜を1914年に出版します。

これが、ブルーズが世に出た最初でした。

W.C.Handyがブルーズを発明したのではなく、アメリカ南部各地で発生していたのがブルーズです。

W.C.Handyが1903年に初めてブルーズと出会ってから100年後の2003年、アメリカ合衆国議会でブルース生誕100年を記念して、ブルーズの年と宣言されました。

それでは、ブルーズはどういう流れで南部の黒人の間で発展していったのか?

もっと深掘りして行くと、ブルーズの原形はワークソングやハンマーソングにみることができます。

ワークソングとは?

ワークソングってのは仕事歌です。

奴隷制度時代に奴隷が集まって、踊ったり歌ったりすることは禁止されていました。

しかし、歌いながら仕事をするのは、能率が上がるという理由で許されていました。

リーダーが歌うと他に人たちが、それに返すという、コール&レスポンスで歌っていました。

決まったリズムとパターンがあって、仕事に合わせて使い分けていたそうです。

こういうのって、昔は日本にもあったらしいんですよ。

うちの父が幼い頃、大人たちがみんなで仕事するときに歌いながら、歌のリズム合わせながら仕事していたそうです。

リズムに合わせながら仕事した方が、怪我もしないし、楽しいですよね。

奴隷制度時代に『とうもろこし皮むき大会』一大イベントがあったそうです。

大量のとうもの皮むきを競い合うんですけど、このイベントは奴隷の辛い日常を打ち破る大切なイベントだったそうです。

そのとき歌われていた曲が多数あって、

Corn Shucking Songs というジャンルになり、カントリー風にアレンジされたものなど今でも歌われています。

ハンマーソングとは

ハンマーソングは重労働の仕事歌です。

力仕事をするとき、歌を歌いながらすると力も出るしタイミングも合う。

伐採作業で斧を使ったり、鉄道作業でハンマーを使うときなどに歌われた歌がハンマーソングなんですよ。

ヨイショ、ヨイショとリズミカルな作業だから一定のリズムで歌詞も短いものがほとんどです。

テンポの速いもの、遅いものといろいろあります。

Got a Rainbow Round My Shoulder

僕は登山をするんですけど、確かに歌を口ずさみながら山を登ると疲れにくいんですよ。

たぶんね、呼吸が整うとか無駄な力が抜けるとか、そういう効果があると思うんですよ。

ちなみにRock’n RollはRock and Rollのつまったものですが

Rockは前後に揺さぶること、Rollはうねるように揺することを意味するので

Rock’n Rollは身体を強く動かす音楽になります。

元々はRockは働きながら歌うことを意味し、Rollは働くことを意味していたのでRock’n Rollのルーツにはハンマーソングがあるんですよ。

刑務所に残ったハンマーソング

20世紀初頭になると労働現場の機械化が進み、ハンマーソングも歌われる機会が少なくなりました。

たしかに、チェーンソーとか使いながらみんなで歌は歌えないですよね。

しかし、黒人刑務所では機械化が進むことはなく、奴隷のように働かされた受刑者の中でハンマーソングは残りました。

1933年〜1934年に民族学者のジョン・ロマックスが刑務所で黒人の歌を録音しました。

そこは、悪名名高いルイジアナ州のアンゴラ州立重罪犯矯正刑務所。

もう名前からいって怖いですよね。

ここで殺人未遂の罪で収監されている、ハンディ・レッドベターという受刑者の歌を録音しました。

そう、彼がレッド・ベリーです。

彼の歌には、ハンマーソングの影響をみることができます。

レッド・ベリーの弟子でもあるプロテストフォークシンガーのピート・シーガー

そこから、ウディ・ガスリーボブ・ディランに繋がっていきますね。

ハンマーを振るということは、抑圧者に対する抵抗という意味も持っていて

そこから、プロテストソングに繋がり

民衆の地位の向上や自由を訴えた音楽運動、フォークリバイバルで歌われていきます。

ワークソングやハンマーソング歌詞の内容が、よくわからないことが多かったりしますが

当時の黒人が本当の気持ちを言う、というのは大変危険なことでした。

白人社会を批判したりすれば、命に関わります。

だから、言葉を濁す

ブルーズの歌詞もそのまま捉えると、意味がよくわからないものが多いですが

自分を抑圧する社会を、自分に酷い仕打ちをする異性に例えたりするのは、奴隷制度時代の影響なんですね。

このはっきり言わずに言葉を濁す

こういう表現の方が、後世に伝わってゆくと思うんですよ。

はっきりと、この社会であいつらに、こんな酷い目に遭わされた、と歌ってしまうと

その時代の、その社会で暮らす、その人にしか当てはまらないけど

はっきり言わないことで、いろんな時代のいろんな境遇の人にも当てはまるので

こういうのがブルーズの詩の素晴らしいところだと思います。

黒人霊歌 ゴスペル

奴隷制度時代、奴隷が集まって話したり楽しんだりすることは禁止されていました。

しかし、キリスト教の集会だけは、制限付きで許されていました。

シャウトってあるじゃないですか。

ロックで「うぁー!」とか叫んだりすることをシャウトって思うけど

シャウトというのは黒人教会での、歌ったり祈ったり踊ったりする、礼拝行為のことをシャウトと言うんですよ。

白人のプロテスタント教会で歌われる讃美歌は、イエス・キリストを讃美する内容ですが

シャウトで歌われる内容は讃美よりも、救いを求める内容が多いんですね。

この辺もブルーズの歌詞の内容に繋がってくると思うんですよ。

シャウトの伝統を元にしたのがゴスペルソング

すでにある喜びを表現するのではなく、歌いながら、自分の中に喜びを湧き上がらせてゆく創造的な歌です。

讃美歌だけでなく、ポピュラーな音楽に乗せて歌うようになり、ゴスペル・ブルーズも出てきました。

ブラインド・ウィリー・ジョンソンというミュージシャンがいますが

スライドギターに強烈なダミ声、

もう、どブルーズだろって思うけど

しかし、歌っている内容は神の歌です。

ブラインド・ウィリー・ジョンソンDark Was The Night Cold Was the Ground

この曲は磔になったキリストが十字架から降され、周りの人たちが悲しんでいるという内容です。

内容を知ってから聴くと、またぜんぜん違って聴こえますよね。

ちなみにこの曲は、宇宙に飛び立って行った曲なんですよ。

NASAのボイジャー計画というのがあって、もしも地球外生命体に出会ったとき聴いてもらえるように、

バッハやモーツァルト、動物の鳴き声などを収録したゴールドディスクに刻まれて宇宙へ旅立って行きました。

宇宙人に聴いてもらえる日は来るんでしょうか?

「ワレワレハ、ブラインド・ウィリー・ジョンソンノファンデス」

なんて言う宇宙人が現れるかもしれません。

ブルーズと悪魔

ゴスペルとブルーズというのは音楽的には、ほぼ同じものでした。

何が違うのか?

決定的な違いは歌う内容ですね。

ゴスペルが神の歌で、勇気や希望を歌ったのに対し

ブルーズは悪魔の歌と呼ばれ

女性に振られる、社会ののけ者、泣かずにはいられない嘆きを歌っていました。

社会的に黒人が白人社会に対して、文句を言うというのは大変危険なことだったので

あわれな俺様になりきり、

自分に酷いことをする社会を恋人に例えたり、

足を引っ張る悪魔という形にして歌っていました。

1862年に奴隷制度から解放されても、辛い状況は続いたから想像できない辛さだったと思います。

それでも、その辛い状況をブルーズに投影させて笑い飛ばす。

これって凄く大事なことだし、

素敵だなと思います。

音楽的な特徴は、全てではないけど12小節が一回しで、ブルーノートという独特の節回しがあります。

ざっくり言うと

ゲ、ゲ、ゲゲゲのゲ〜のゲ〜がブルーノートの音ですね。

黒人霊歌やゴスペルなどにも使われた、五線譜に表せない音。

ギターのチョーキングも、半音や全音までチョーキングせず4分の1位弦を上げるクウォーターチョーキングというのを多用します。

人間はぴったり音程の合った音、ぴったりのリズムよりも、少しズレたところに感動するんですよ。

それが、グルーブ感を生み出して身体を揺らしたくなります。

また、歌も基本はコール&レスポンスです。

ワークソングやハンマーソングではリーダーが歌うと周りがそれに返すという

コール&レスポンスでしたが

一人ではできないので、自分歌ってそれにギターが返すというようなコール&レスポンスになっているのも特徴的です。

そして、初期のブルーズの歌詞には基本パターンがあります。

①被害者としての歌い手

②歌い手に対する加害者

③不安や憂鬱

③の不安や憂鬱を現すブルーズが、擬人化して登場するというのが特徴で

自分の周りをうろつき回ったり、時には一緒に歩いたりしながらも

歌い手につきまとい、足を引っ張ったりそそのかしたり

歌い手はそこから逃れようとするんだけど、結局は逃れられない。

敵なのか味方なのか、わからない存在。

ブルーズの歌詞を読むとブルーズが現れるのは朝が多いんですよ。

これって現代でいうと、うつ病そのものですよね。

うつは朝が辛い。

起きれないし、不安で怠くて、もう理論とか通用しないですから、何もかも終わりのような気がしてくる。

奴隷の人たちは200年間摂取され、奴隷解放後も差別を受けてたら

そりゃもう、うつになると思うんですよ。

ブルーズはブルーな憂鬱な気持ちとなりますが

Blue Devilsが詰まったものという説もあるんですよ。

奴隷制度や差別は巧妙なだまし罠であって、いくら神に祈っても、黒人は助けてくれません。

支配する者にとっての良い行いをしても、自由になれることはないんですよ。

例えば、ブラック企業で会社の規則や社内規定を守り続けても、幸せにはなれないですよね。

企業側が得するだけで、働く人たちは摂取される。

そんなわけでBadがGoodという考えが生まれて来るんですよ。

支配する者にとってGoodなことが、支配される側にとっては必ずしもGoodとは限らない。

最近の英語では

「彼って素敵ねぇ」

というのを

「彼って凄くBadだわぁ」

と言ったりするらしいですが、元々は黒人たちが使っていた言葉なんですね。

キリスト教の悪魔というのは、天国を追い出されたルシファーです。

奴隷たちは、天国を追い出されたルシファーに親近感を持っていた。

黒人の民話の中には、よく悪魔が登場するんですよ。

敵か味方かよくわからなかったり

また、主人公がダークヒーローだったり

とても面白い民話がたくさんあります。

その辺は、ウェルズ恵子さんがまとめています。

ウェルズ恵子 笑いと回復のための語り

http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/lcs/kiyou/pdf_23-1/RitsIILCS_23.1pp.15-30WELLS.pdf

デルタ・ブルーズ

初期のデルタ・ブルーズといえばチャーリー・パットン

デルタの声と言われ、ゴリゴリのダミ声でデルタブルースの中心人物でした。

彼は当時のエンターテナーで、

客のニーズに合わせてなんでも演奏したようです。

映像は残っていませんが、演奏のパフォーマンスもとても派手で

ギターを肩に乗せて演奏したり

寝転んで演奏したり

もう、パットンが演奏してると、

砂ぼこりが舞っていたので、すぐに「あ、パットンだ」とわかったという話もあります。

パフォーマンスでもお客さんを楽しませていたようですね。

パットンの歌のパターンは、恋人が浮気してふられるというストーリーなんですけど

Down the Dirt Road Blues という歌は

知らない世界に出て行こう

知らない世界に出て行こう

今は気分が悪いけど、じきに治ると思うんだ

俺のライダーには何かある 彼女は男を隠そうとしている

俺のライダーには何かある あいつは男を隠そうとしている

俺にだってあるさ あのクソ男を捕まえる手が

恋人のことをライダー(Rider)と歌っていますが、

ライダーとはハンマーソングでも歌われる、逃亡者を取り締まる看守がライダーなんです。

なぜ看守と恋人が、同じライダーという単語で呼ばれるのか?

両方とも憂うつをもたらす運び屋という意味で使われてるんですね。

ブルーズの歌詞の定番パターンは、

恋人に振られる、

酷い仕打ちをうける

といった内容のものが多く見られます。

恋人に捨てられることを、恐れ過ぎだろ!

という感じがするんですが、それには2つ理由があって

一つは、理不尽な社会を恋人に例えて歌っている。

黒人がはっきりと白人社会を批判するのは、命の危険がある時代でしたからね。

もう一つは、

現実的な理由は多くの黒人男性が衣食住を女性に依存していた

黒人男性には、不当に収入の少ない危険な仕事しかありませんでしたが

黒人女性は家事育児の手伝いや、農作業などがありました。

女性に振られるというのは、生活的にも精神的にも大問題だったという社会に背景がありました。

チャーリー・パットンと同じ頃出て来たのが、サン・ハウス

ヘヴィなリフでゴスペル風の歌い方

その後に出てくる、ロバート・ジョンソンやマディ・ウォーターズなどに多大な影響を与えたブルーズマンです。

元々は牧師だったけど、ブルーズに移行して神とブルーズの間で揺れ動く、世界観を表現する

僕も大好きなブルーズマンです。

サン・ハウスの相棒がウィリー・ブラウンでチャーリー・パットン、サン・ハウス、ウィリー・ブラウン、ルイーズ・ジョンソンのセッション

『伝説のデルタ・ブルース・セッション』

これが鳥肌が立つ名盤中の名盤で、今でも聴くことが出来るので是非聴いてください。

デルタ地帯を中心としたカントリーブルーズは他にも

ミシシッピ・ジョン・ハート、ブラインド・レモン・ジェファーソン、ブラインド・ブレイク、スキップ・ジェイムズやビック・ビル・ブルーンジーなどの多くのブルーズマンを生み出しました。

嘆きのブルーズ

サン・ハウスたちの次の世代として出て来たのが有名なロバート・ジョンソン

ブルーズマンの中では、群を抜いて有名な存在ですよね。

ロックの源と言われたり、ローリング・ストーンズやエリック・クラプトン等に多大な影響を及ぼしたブルーズマン。

ロバート・ジョンソンが何をしたのかって言うと

この世代になると、いろんな音楽をレコードで聴き出した世代で

ロバートは放浪生活をしていたから、

各地でいろんなブルーズを聴いてそれを自分の中に取り込んでいった。

デルタ地帯より都会では、より洗練された味わいのシティブルーズが発展していってたんですね。

リロイ・カーやタンパ・レッド、ロニー・ジョンソンなどがいます。

そういったシティブルーズをデルタブルーズの中に取り込んでミックスさせる。

これって当時は革新的なことだったんですよ。

それ以前は、ブルーズはダンスミュージックの要素が強くて

お客さんの様子を見ながら、フレーズを繋げて長くしたり

歌詞もお決まりのフレーズを繋げたり

この辺はワークソングやハンマーソングの流れですよね。

今のDJのような要素が強かった。

でも、ロバート・ジョンソンは曲をレコードに収まる3分程度にまとめて構成して

歌詞も今では当たり前だけど、告白型という型にまとめていった。

今では当たり前のことを、それが無かった当時に作ったというところが凄い。

これが、その次に出て来るシカゴブルーズに繋がっていくんですよ。

シカゴブルーズ

今までは、アメリカ南部のデルタ地帯で綿の生産が主流で、そこに人が集まりブルーズが発展していきましたが

1930年後半になると、デルタの北に位置するシカゴで工業が盛んになり

人々もシカゴに移動して行った。

ちょうどその頃、エレキギターも開発されてバンドスタイルが確立されていきました。

代表的なミュージシャンがマディ・ウォーターズやハウリン・ウルフ、Tボーン・ウォーカーなど

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いろいろなミュージシャンが出て来て、レコードも数多く録音されここから世界へ広がって行きました。

中でも、イギリスの若者たちが熱狂してローリング・ストーンズやエリック・クラプトンなんかが出て来る。

ローリング・ストーンズなんか最初の頃オリジナルはないんですよ。

ルーツミュージックを広めるというコンセプトだったので。

ここまで長いこと話してきましたが

重要なのは、やっぱりスピリットですよ。

ただブルーズの形式通りに演奏しても、歌ってもそれはブルーズではないじゃないですか。

人それぞれの、これが俺のブルーズっていうスピリットがないと、ブルーズにはならないわけですよ。

黒人の人たちは、辛い日常の中で、自分の辛さや社会の理不尽さなんかを表現してきたってのは、すごいことだと思いますよ。

時代が変わって、国や人種が違ってもやはり心の中にブルーズがあるわけじゃないですか。

それを、先人たちのスピリットを大切にして生きて行きましょう!

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