その男、デルタブルース / サン・ハウス
ども、サニータジマです。
一口にデルタブルースと言っても、いろんなスタイルがある。
ワイルドにスライドさせる人
繊細にメロディを弾く人
ドスの効いたダミ声で唸る人もいれば、ファルセットで嘆く人もいます。
デルタブルース自体が、余計な物を削ぎ落とした音楽であるので、ブルースマンの魂が現れやすい音楽なんですよ。
その中でも、これぞデルタブルースと思うのがサン・ハウスであります。
ゴスペル調な歌い方、唸るリゾネーターギター
聴く者に強烈な印象を残します。
その男、デルタブルーズ。
お洒落番長 サン・ハウス
デルタブルースで、これほど資料が豊富なブルースマンもいないのではないか。
音源、映像、写真等、豊富に残されている。
普通なら、ここから音源レヴューに行くのだろうけど
そういったレヴューなどは他に沢山あるので、そちらを参考にしてほしい。
サン・ハウスのファッションを見てほしい。
これほど、白シャツが似合う男がいるだろうか?
江口洋介くらいかな?
江口洋介の数十倍いってるだろう。
ドレスシャツ。これも違和感なく着こなしてしまっている。
普通だと一歩間違えれば、3周回って只のおぼっちゃまになってしまう。
そして、リボンタイ。
サン・ハウスのトレードマークである。
これも難しいよー。リボンタイって言ったら女子高生くらいしか思い浮かばない。
リボンタイ自体が主張が強くて、変に目立ってしまうが
サン・ハウスが付けると違和感なく、自然である。
一流にミュージシャンは皆そうであると思うが、自分自身を良く分かっている。
自分に何が似合うのか、周りは自分に何を求めているのか
それを分かっているのがカリスマである。
カリスマは見る者を裏切ったりしない。
言うことだって
「若いもんはブルースで色んなことを歌うが、ブルースは男と女の間にしかないんだ」
と期待通りのことを言ってくれる。
一貫してブレが無い。
単純と言えば単純だけれど、何処を切ってもサン・ハウスなのである。
前歯が無くて、喋ると酔っ払っているように見えて
チャランポランなおっさんと勘違いされやすいが
あのビシッと決めたファッション、ピシッとしたヘアースタイル
アメリカの男というより、英国紳士のような気がする。
ロバート・ジョンソンも「奴はいつも小綺麗にしていた男だった」
と相棒のジョニー・シャインズが語ってる
サン・ハウスの影響もあるかもしれない。
サン・ハウスは服装が人格に影響することを、身をもって知っていたのではないか。
スーツを着れば背筋がピシッとした気がするし
人間は単純で服装にあった仕草や行動をするらしいのだ。
そういえば、僕は普段着のままサラッとライブはできない。
ライブのときは勝負服で身を固め、
普段の自分から違う自分になる。
サニータジマにならなくては、恥ずかしくて演奏なんか出来やしない。
そういった、ファッションが及ぼす影響を知っていたのだろう。
どの写真を見ても、ビシッと決めているのでどこか武士道とか騎士道を感じるのだ。
いつ死ぬかわからない。
いつ死んでも良いように身嗜みはキチッとする。
ステテコにランニングシャツなんかで死んだら最悪ではないか。
サン・ハウスのギターと言えばリゾネーターギターである。
サン・ハウスがリゾネーター以外のギターを持っても似合わない。
あの音はリゾネーターでなければ出せないし、白シャツ、リボンタイ、リゾネーターギター
全て、違和感なく収まってしまうのだ。
ど派手なアクション
サン・ハウスの演奏動画を見てほしい。
あの、ド派手なアクションが目を惹く。
「兄ちゃん、ギターはぶっ叩くもんだ」と言われているみたいだ。
サン・ハウスが現代でギター教室に通ったら、強制される部分が沢山あるだろう。
スライドバーの当て方、
スライドバーはフレットに対し垂直に当て、フレットの前後を均等に振る。
これが基本だが、サン・ハウスはスライドバーがフレットに対して斜め過ぎて、振り方も派手に振っている。
僕はサン・ハウスのDeath Letter Bluesをコピーしてみたが
あの曲を弾くとあの動きアクションになってしまうのだ。
これは必要な動きであることが分かった出来事があった。
僕は古武術に凝っていた。
例えば30kgの岩を持ち上げて動かすとする。
力のない人には無理だろう。
下手したら腰を壊すかもしれない。
ところが古武術を使えば、力の無い人でも持ち上げ動かすことが出来るのだ。
どうするかと言うと
30kgの石を持ち上げ動かすという動作を腕だけでやろうとしても、これは動かない。
その作業を腕だけではなく、
全身の筋力を総動員すれば軽く動かせてしまう。
昔の人は、そういった身体の使い方を心得ていたが
現代人は忘れてしまっている。
こういった古武術の技法が今では介護分野などで応用されている。
その古武術を楽器演奏に応用出来ないか?
という講座「古武術に学ぶ楽器奏法」があった。
古武術研究家の甲野善紀氏を迎え、古武術を楽器の演奏に応用してみようというのである。
楽器を演奏する、その一音一音に身体全体を参加させれば
その楽器の値段は、一桁二桁増えた楽器の音色になる。
僕は迷わず参加した。
当日、甲野善紀先生に直接指導を受けたい方は、楽器を持って来るようにとの事で
僕はリゾネーターを持って行った。
会場に集まったのは30人程の参加者。
フルートやサックス、三味線など持って来ている人もあれば
楽器は持って来ず、話だけ聴きに来た人もいた。
最初に甲野先生から、身体の使い方、古武術のレクチャーがあり
その後、「先生から直接指導を受けたい方、手を挙げてください」
僕はすかさず手を挙げた。
折角、ここまで来たのに元以上のものを持って帰らなければ
というセコい考えからだ。
ギターを持って前に出た。「何か一曲演奏してください」と言われ
ここは一発、Death Letter Bluesを演奏した。
演奏が終わると周りは、シーン・・・
やっちまったスベったか・・・と思っていると甲野先生が
「私は今まで何十人と見てきたが、こんな人は初めてだ。全ての動きに無駄がなく、全て理にかなっている。教えることは何もない」
と絶賛であった。
僕は、「俺はすげえな。何も教わらず、古武術演奏ができてしまうなんて俺はラストサムライか?」
と思っていたが、
よく考えれば、サン・ハウスの動きをそのままコピーしただけである。
そう、サン・ハウスのあの動き。スライドバーのワイルドな振り方
手刀で宙を切るような、右手のアクション
これは、適当に演っているのではない、全て理にかなった動きであったのだ。
サン・ハウスをコピーすれば、自ずとあのアクションになる。
あのアクションをしなければ、あの演奏はできないのだ。